AI は平等をもたらすのか

必ずしもそうとは言えない。MIT Sloan のサイト記事より、

  • ジョンソン教授(ノーベル賞受賞者)は、現在のAI革命を産業革命や海洋植民地主義の時代になぞらえ、新しいテクノロジーが必ずしもすべての人々に利益をもたらすわけではないと指摘している
  • 研究では、包括的な政治制度を持つ国と搾取的な制度を持つ国を比較し、個人の権利を促進する包括的な政府の方が持続的な長期成長を実現できることを示した
  • AIの出現により、熟練労働者や中級労働者が技術に取って代わられ、エリート層だけが繁栄するという権力の集中が起こる可能性がある

(参考)ノーベル経済学賞受賞講演

2024年ノーベル経済学賞受賞者の3氏は、制度の質が各国の経済発展と生活水準の格差を生み出す根本的な要因であり、特に植民地時代の制度的遺産が現代の経済パフォーマンスに大きな影響を与えていることを、様々な事例研究を通じて実証的に示した。

また、3氏は共通して、AI技術の発展など現代の課題に対しても、制度的視点からのアプローチが重要であることを強調している。

包括的な制度(英語では”Inclusive institutions”)とは、以下のような特徴を持つ制度のこと:

  • 社会の幅広い層の参加を保証し、権力や経済的機会が特定のエリート層に独占されない
  • 法の支配が確立され、全ての人々に平等に適用される
  • 財産権が適切に保護され、イノベーションや投資のインセンティブが確保される
  • 政治的な多元主義が保障され、様々な意見や利害が政策決定プロセスに反映される
  • 経済活動への参入障壁が低く、公平な競争環境が整備されている

ノーベル経済学賞の正式名称は「スウェーデン国立銀行経済学賞(Sveriges Riksbanks pris i ekonomi till Alfred Nobels minne)」。これは、アルフレッド・ノーベルの名を冠した賞で、1970年から経済学分野の業績に対して授与されている。